若草寮からのお知らせ
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2024.01.26
求人情報
「児童養護施設 仕事内容④」~心理の専門職編~
児童養護施設のことをもっと知りたい!と思ってくださっている方へ
本シリーズもこれで4回目となりました。今回は、「心理の専門職」の仕事について紹介していきたいと思います。
シリーズこれまでの記事はこちら
①児童支援員編
②調理・食育の専門職編
③自立支援の専門職編
■児童養護施設の心理職
児童養護施設には、何らかの事情により家庭で生活を続けることが難しくなった子どもたちが入所してきています。事情は子どもそれぞれで全く違いますが、生活の場所が変わるということだけを考えても、子どもたちにとっては大きな出来事です。そんな子どもたちが、施設での暮らしを前向きに捉え、未来に向かって生活していけるようお手伝いをする、そんなサポーターの役割を務めるのが、施設の心理職です。
東京都の児童養護施設には、心理の専門職として2種類の職種が配置されています。
一つが“心理療法担当職員”。これは国の基準で配置されている心理職で、名前の通り児童の心理療法を実施することを主な業務内容としています。
もう一つが東京都独自の基準で配置されている“治療指導担当職員”で、施設によって働き方に差はあるものの、より生活に近い場面で他職種と連携しながら働くことが想定されています(治療指導担当職員は、心理士以外の資格保持者でも働くことができますので、厳密に言えば心理の専門職とは言えないかもしれません)。
二つの心理職は、全く違う働き方をしているという訳ではありません。役割分担のようなかたちで働き方に差をつけながらも、心理職チームとして協働しながら、施設で必要とされる業務を担っています。
■心理職の仕事
心理職の仕事と聞くと、多くの人はカウンセリングやセラピー、心理療法といった相談業務を思い浮かべることと思います。実際、施設の心理士も子どもたちに対して個別にカウンセリングやセラピーの時間を提供していて、それぞれとても大切な時間になっていますが、施設の心理職の仕事はそれだけではありません。実はその他にもいろいろな場面で仕事をしています。
心理職がどんな仕事をしているか、簡単に紹介していきましょう。
・心理相談
子どもたちの希望に応じて、心理士と一対一で過ごす時間(カウンセリングやプレイセラピーなど)を用意しています。その時間をどう過ごすかは、子どもたちそれぞれの悩みや相談ごとに応じて違っており、心理士と子ども本人で話し合って決めています。
カウンセリングやプレイセラピーといったものがどういうものなのか、もう少し詳しく説明しましょう。
カウンセリングとは言葉でのやりとりを中心にした心理相談の一つで、中高生などの比較的年齢の高いお子さんが希望されることの多い形式です。話の内容は悩み事などに限っているわけではなく、お子さんがその時々で考えていることを自由に心理士に話しています。話をすることで考えが整理されたり、それまで気づいていなかった自分の気持ちや考えに気づいたりすることがあり、その過程に心理士は付き添っています。
プレイセラピーは、言葉の代わりに遊びを通してやりとりをする心理相談の形式です。まだ年齢の小さなお子さんなどの場合、言葉より遊びを通してやりとりする方が、(本人にそのつもりがなかったとしても)ずっと豊かに自分のことを表現できるものです。大人になるとつい言葉で得られる情報に重きを置いてしまいがちですが、本当は言葉にならないものの中にこそ、大事なことが隠されているのかもしれません。カウンセリングの場合と同じように、心理士はお子さんの表現したものに丁寧に付き添っていくことを心がけています。
・生活環境の調整
子どもたちがそれぞれの強みを伸ばし、困難を克服していけるような生活環境を作るにはどうしたら良いか、子どもたちの生活の様子を実際に見てみたり、支援員さん達と意見交換をしたりしながら、心理士もアイディアを出しています。もちろんそうしたことは全ての職種の方が考えていることで、心理職独自の業務とは言えません。ですが、心理学の知見を基にしたり、一歩離れたところから生活グループ全体を捉えたりすることで、他の職種とは少し違った視点から意見を出せることが心理職の強みになっています。今何が起きているんだろう、この先何が必要なんだろう、と考える視点を持つことが、心理職の大事な仕事の一つになっています。
・他職員のサポート
一般の家庭でも子育てには悩みがつきものですが、それは施設であっても同じこと。日々子どもと関わる職員さんは、より良い子育てのためにあれやこれやと迷うことも多く、やはりサポートを必要としています。心理士は、職員さんが子どもの様子で分からないことがあったり、対応に迷っていたりする時に、発達やコミュニケーションなど心理学の視点から助言をしています。時には雑談のようにただ話を聞いてという時間もありますが、そうした時間も職員さんの息抜きになるものです(子育てを経験された方は特によく分かるのではないでしょうか笑)。話をすることで頭の中を整理して、また元気に働くことができるようになれば、それは最終的には子どもたちのためになっているとも言えるでしょう。これも、心理職の大事な仕事の一つです。
・その他
施設心理士は、退所した児童に対する支援(アフターケア)や、未来の心理職を育てるための実習生の受け入れ、地域の子どもや子育て家庭を応援する地域支援事業などにも携わっています。施設の中だけではなく、広く子どもたちの健やかな育ちを応援したい、そんな気持ちで業務に当たっています。
■資格について
現在若草寮で働いている心理職の職員は、臨床心理士、公認心理師の資格を持って働いています。
資格取得のために大学院への進学や実習経験が必要だったり、資格維持のために条件がある(臨床心理士資格は5年ごとに審査があります)など、大変なところもある資格ですが、大切な子どものこころを扱う仕事である以上、専門性や責任を引き受けていく覚悟が必要だと考えています。
現在働いている心理職3人に、簡単なインタビューをしてみました。
■Q1:今まで心理学のどんな分野を中心に学んできましたか?
●心理療法担当職員Aさん
私が修了した大学院は、一つの分野に依らない事が特徴なので、これを中心にというものはなく、幅広く学んできました。しかし、仕事をしていると、勉強不足を痛感する事がたくさんあります。また、時代の流れに応じて、知識を更新する必要もあります。そのため、今でもずっと勉強中です(つい後回しにしてしまいますが…)。
●心理療法担当職員Bさん
遊戯療法や描画法などを中心に学んできました。働く中で、発達障がいの知識をもっと身につけたいと思い、最近では発達に関する知識を中心に学んでいます。
●治療指導担当職員Cさん
大学、大学院では、臨床心理学(対人援助のための心理学)から基礎心理学(人間の心の機能の研究としての心理学)まで幅広く触れていますが、その中でも、人間の無意識の領域などを扱う力動的心理療法や、トラウマケアの手法などに興味を持って学んできました。実際に働くようになってからは、プライセラピーや子どもの発達、養育者支援といった分野を中心に学んできています。
■Q2:仕事をする上で難しいところは何ですか?
●心理療法担当職員Aさん
異なる経験や専門性を持った職員が集まっているので、互いの考えを伝え合うのが難しいことがあります。相手の話を聞き、自分の感情を見つめ、双方の状況を理解する事を意識しています。
●心理療法担当職員Bさん
心理療法のほかに、他の分野の専門知識をもった職員と支援について話し合うことがあります。タイミングや言葉選びなどは難しく、伝わりやすいように日々工夫を考えながら行っています。支援の中で、なかなか解決策が見当たらず、見通しをもつことが難しいこともあります。児童支援員の方とともに試行錯誤する経験を通して、徐々に大きな流れを見る力が身に付いていくものだと感じています。
●治療指導担当職員Cさん
たくさんの方と協力しながら働く仕事ですので、自分以外の人たちが何を大事に考えているのかを知ることが大切になります。最初に自分の思い描いていた通りには進んでいかないことも多く、その辺りに難しさも感じますが、丁寧な仕事のためにやりがいを感じる部分でもあります。うまく着地点を見出せた時の嬉しさも格別です。
■Q3:やりがいや楽しさについて教えてください。
●心理療法担当職員Aさん
子どもたちの強み、頑張っているところ、可愛らしいところを発見することです。
●心理療法担当職員Bさん
子どもの成長に関係し、そこに立ち会えることだと思います。ほんの些細な変化でも、その背景には色々な人とのかかわりが積み重なっていると思います。その子と関係している人々との繋がりによって、また新たな変化が生まれていく過程やその子の生きる強さに触れたときに面白さを感じます。
●治療指導担当職員Cさん
昨日できなかったことができるようになる、興味や関心が拡がり豊かになっていくなど、子どもの成長がよく見えるところが、一番のやりがいです。また最近は地域支援として近隣のご家庭に関わるような仕事も増えてきましたが、新しく知り合った方々とコミュニケーションを取ること、今までやってこなかった新しい支援の形を考えることなどにも、楽しみとやりがいを感じながら取り組んでいます。
以上で、「児童養護施設 仕事内容④~心理の専門職編~」は終わります。心理職がその専門性を活かしながらも、心理職同士、他職種間で連携をして働いていることが伝わったのではないでしょうか。また次の紹介記事も楽しみにしていただければと思います。
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